自営業・フリーランスの方が老後資金を作るのによく耳にする小規模企業共済とiDeCo。それぞれの特徴からどちらを選んだ方がいいのか解説していきます。また小規模企業共済とiDeCoのメリット・デメリットについてもまとめています。
1.手堅く老後資金を貯めたい人は小規模企業共済、運用を自分でして運用益も得たい人はiDeCo
詳細については、後から説明しますが、結論から言うと手堅く老後資金を貯めたい人は小規模企業共済、運用を自分でして運用益も得たい人はiDeCoがおすすめです。
所得が多いなら、小規模企業共済もiDeCoもやるといいでしょう。自営業・フリーランスの方なら、iDeCoで年間81.6万円、小規模企業共済で年間84万円を積み立てられ、節税になります。
優先順位としては、節税メリットを考えれば、
1.iDeCo 利回りは投資する商品によって5%前後
2.小規模企業共済 利回りは1%程度
iDeCoを運用する場合、どこで運用するかが大事になってきます。S&P500や楽天・全米株式インデックス・ファンドなどが人気です。
iDeCoも小規模企業共済も資金拘束(途中で引き出せない)ということがあるので、それがデメリットに感じる人もいるでしょう。
自営業・フリーランスの方で、老後資金のためとか退職金代わりという方ならば、おすすめです。
投資するときに、無理なく積み立てることも大事です。未来の老後も大切だけれども、若い頃にしかできない体験も大事です。
また若い人で、自営業・フリーランスの方は、手元の資金を自己投資して将来のための収入を上げるということも大事でしょう。
その中で余剰資金があれば、iDeCoや小規模企業共済するのがいいでしょう。
シミュレーション
小規模企業共済とiDeCoで運用した場合のシミュレーションについて紹介します。
小規模企業共済
平成28年4月1日現在の法令に基づいて試算したものです。以下の条件で試算した場合になります。
加入年月 | 2020年12月 |
現在の年齢 | 40歳0ヶ月 |
脱退年月 | 2040年12月 |
掛金月額 | 68,000円 |
掛金月額は、iDeCoの限度額までと同じに設定しました。この場合の掛金合計と受け取れる共済金は以下のようになります。
掛金合計額 | 16,388,000円 |
共済金A(事業廃止等) | 19,038,640円 |
共済金B(老齢給付等) | 18,162,800円 |
共済金Aで1.1%程度増えるという状態です。
iDeCo(個人型確定拠出年金)
iDeCoのシミュレーションは、以下の条件で米国ETFを運用した場合を想定して行います。
掛金月額 | 68,000円 |
積立期間 | 20年0ヶ月 |
リターン | 5% |
掛金、積立期間は小規模企業共済の場合と同じにしました。この時の、積立総額が27,950,289円になります。
小規模企業共済に比べて米国ETFで運用したiDeCoの場合には、約1.5倍の資産を増やせます。
しかし小規模企業共済は、運用の上で元本を割ることはないので確実に積み立てたい自営業・フリーランスの方にはおすすめです。老後資金をもっと増やしたい人はiDeCoがおすすめです。
なお小規模企業共済は、以下の3つの場合元本割れするので注意が必要になります。
- 加入期間が短く共済金を受け取れない場合
- 20年未満で途中解約した場合
- 掛金を減額した場合
2.小規模企業共済とは
小規模企業共済は、国の機関である中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営する小規模企業の経営者やフリーランスのための退職金制度です。
経営者やフリーランスは一般の従業員と比べて、社会保険や労働保険などの社会保障がないため、これらの不足を補う意味の制度です。
小規模企業共済は、以下のような特徴があります。
- 掛金は、月額1,000円~70,000円。最大年間84万円
- 運用できる商品は選べない。予定利回りは、1%程度
- 運用できる期間に満期とかはない
- 個人事業を廃止したり、法人を解散した場合や、役員を退任した場合などに共済金を受け取れる
途中引き出しできる方法もあります。共済金の受け取りは、例えば次のパターンがあります。
- 共済金A:個人事業を廃業した場合や契約者が亡くなった場合
- 共済金B:65歳以上で180ヶ月以上掛金を払い込んだ場合
解約もできますが自己都合で解約した場合、20年未満は元本割れします。
小規模企業共済の加入資格
加入資格は、以下のように色々細かくあります。従業員が5~20人くらいまでの個人事業主が入れるイメージです。
- 建設業、製造業、運輸業、不動産業、農業、サービス業(宿泊業、娯楽業に限る)など従業員の数が20 人以下の個人事業主または会社の役員
- 商業(卸売業・小売業)、サービス業(宿泊業、娯楽業を除く)従業員の数が5人以下の個人事業主または会社の役員
- 組合員数が20 人以下の企業組合の役員、従業員数が20 人以下の協業組合の役員
- 従業員の数が20 人以下かつ農業の経営を主として行っている農事組合法人の役員
- 従業員数が5人以下の弁護士法人、税理士法人等の士業法人の社員
- 上記1、2に該当する個人事業主が営む事業の経営に携わる共同経営者(事業主1人につき2人まで)
3.小規模企業共済のメリット
小規模企業共済のメリットは、以下の通りです。
- 掛金が全額所得控除
- 共済金受取時の税制優遇
- 貸付制度の利用が可能
順に説明していきます。
メリット1.掛金が全額所得控除
毎月1,000円~7万円の掛金は、全額「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除が可能です。
ちなみに掛金は、契約者個人の収入から支払うので、個人事業の経費として算出することはできません。
メリット2.共済金受取時の税制優遇
共済金の受け取りをする際は、一括受取の場合は「退職所得」、分割受取の場合は「公的年金等の雑所得」となり税制の優遇を受けられます。
退職所得は、掛けた年数に応じて控除額が大きくなります。
公的年金等の雑所得に関する控除は、例えば、65歳以上で合計所得が1,000万以下の場合110万から329万の間の場合には、110万の控除を受けられます。
メリット3.貸付制度の利用が可能
掛金の納付機関に応じた、「貸付限度額」の範囲の貸付制度を利用できます。
貸付制度は、金利が安く借りられます。
事業資金の貸付である一般貸付や傷病災害時貸付、福祉対応貸付、創業転業時・新規事業展開等貸付など様々な貸付が可能となています。
4.小規模企業共済のデメリット
小規模企業共済のデメリットは以下の3点になります。
- 12ヶ月未満の掛捨てリスクがある
- 加入期間が20年未満は元本割れする
- 受取時には課税される
順に説明していきます。
デメリット1.12ヶ月未満の掛捨てリスクがある
掛金納付月数が12ヶ月未満の場合には、準共済金、解約手当金を受け取れません。
準共済金とは、フリーランスの場合には、法人にした結果加入資格がなくなったため解約して得る共済金です。
解約手当金は、任意解約した場合などです。つまり納付月が12ヶ月未満の場合には、掛捨てになります。
デメリット2.加入期間が20年未満は元本割れする
掛金納付月数が20年(240ヶ月)未満で任意解約した場合は、受け取れるお金が掛金合計額を下回り、元本割れします。
さらには加入期間が20年以上だったとしても、途中で掛金を増額したり減額した場合で、掛金区分ごとの掛金納付月数が20年を下回った場合、任意解約した場合に、解約手当金が掛金合計額を下回ることがあります。
例えば、掛金を6万円から3万円に減額した場合、それまで納付していた3万円分については減額時点で掛金納付月数がストップされます。
そのため、加入から納付月数が20年を超えていても減額部分が20年未満になり、共済金受取額が掛金よりも少なくなる場合があるのです。
20年以上掛金を支払わなければ、損してしまうため、加入時は注意が必要です。
デメリット3.受取時には課税される
共済金の受取時は、退職所得または雑所得として課税されることになります。
つまり小規模企業共済は、課税を先送りにしている制度ともいえるのです。ただしメリットで説明したように、退職所得はほかの所得とは分離して計算され税金が軽減される仕組みになっています。
5.iDeCo(個人型確定拠出年金)とは
iDeCoとは国の制度で、公的年金の給付額に上乗せする目的で作られた私的年金制度です。
iDeCoは、加入者自身が申し込みして、掛金を拠出して、運用方法を自分で選ぶものです。
運用の種類を選べば、小規模企業共済よりも運用益を高くすることが可能です。
しかし老後資金のためのiDeCoであるので、実際には、が米国株を沢山購入するというよりは、債券の比率を増やすなどして、手堅くするのがいいでしょう。
掛金は、月額5,000円から職業によって月額上限額まで運用できます。上限額は、例えば自営業・フリーランスの場合には68,000円までです。
iDeCoについては、こちらの記事に詳細を説明しています。
6.iDeCoのメリット
iDeCoのメリットは、以下の通りです。
- 掛金は全額所得控除
- 運用益が非課税
- 受取時の税制優遇
順に説明していきます。
メリット1.掛金は全額所得控除
iDeCoは、小規模企業共済と同様に掛金の全額が小規模企業共済等掛金控除となり所得控除されます。
そのため、加入期間中の掛金に関する所得税・住民税の軽減効果があるでしょう。
メリット2.運用益が非課税
iDeCoでは、運用で出た利益に関して全額非課税となります。一般的な金融商品は、NISAなどを除けば運用益に対して税金がかかりますが、iDeCoは非課税です。
そして運用益を再投資することも可能で、効率的な運用をiDeCoにおいて行う事ができます。
メリット3.受取時の税制優遇
iDeCoは、年金受取時に税制優遇を受けられます。
iDeCoは、年金として分割して受け取るか、一時金での受取が可能です。年金として受け取る場合は、「公的年金等の雑所得」、一時金の場合には「退職租特」となり税制上に一部控除を受けられます。
7.iDeCoのデメリット
iDeCoのデメリットは、以下の通りです。
- 運用リスクは加入者自身が負う
- 途中で資金の受け取りはできない
- 手数料がかかる
順に説明していきます。
デメリット1.運用リスクは加入者自身が負う
iDeCoのデメリット一つ目は、運用リスクは加入者自身が負うというものです。
iDeCoは、自分自身で運用の種類を選びますが、商品によっては元本割れするリスクもあるのです。
老後資金のための運用なので慎重に選ぶ必要があるでしょう。私自身は、それでも資産を増やすために、米国インデックスファンドに投資しています。
60歳になるときに、暴落していたら、受取を10年先延ばしにする予定です。
リスクを取りたくないという人は、債券などの割合を増やすといいでしょう。
デメリット2.途中で資金の受け取りはできない
iDeCoのデメリット2つ目は、途中で資金の受け取りはできないということです。
iDeCoは、公的年金の上乗せのための制度であるため、原則として60歳以降でないと資金を受け取れません。
一般的な金融商品は、必要に応じて売却できますが、iDeCoでは60歳までできないのです。
デメリット3.手数料がかかる
iDeCoのデメリット3つ目は、手数料がかかることです。
iDeCoには、加入時や口座管理手数料がかかります。手数料は、金融機関により異なりますので、よく検討しましょう。
例えば、楽天証券の場合には次のような手数料がかかります。
加入時・移換時の手数料(税込)
支払先 | 手数料 |
---|---|
国民年金基金連合会 | 2,829円 |
毎月の管理料(掛金を拠出している方)
支払先 | 手数料 |
---|---|
国民年金基金連合会 | 105円/月 |
楽天証券 (運営管理手数料) | 0円 |
信託銀行 | 66円/月 |
合計 | 171円/月 |
信託報酬
運用する商品が投資信託などである場合、別に信託報酬がかかります。例えば、楽天・全米株式インデックス・ファンドの場合には、年間0.162%の手数料がかかります。
まとめ
小規模企業共済とiDeCoを比較した場合、結論から言えば、手堅く老後資金を貯めたい人は小規模企業共済、運用を自分でして運用益も得たい人はiDeCoでした。
所得が多いなら、小規模企業共済もiDeCoもやるといいでしょう。自営業・フリーランスの方なら、iDeCoで年間81.6万円、小規模企業共済で年間84万円を積み立てられ、節税になります。
小規模企業共済では、1%程度増やせ、iDeCoは自分で運用方法を選びますが、投資信託の場合年に5%程度リターンを得られます。
小規模企業共済は、国の機関である中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営する小規模企業の経営者やフリーランスのための退職金制度でした。
小規模企業共済の特徴は以下の通りです。
- 掛金は、月額1,000円~70,000円。最大年間84万円
- 運用できる商品は選べない。予定利回りは、1%程度
- 運用できる期間に満期とかはない
- 個人事業を廃止したり、法人を解散した場合や、役員を退任した場合などに共済金を受け取れる
小規模企業共済のメリットは、以下の通りです。
- 掛金が全額所得控除
- 共済金受取時の税制優遇
- 貸付制度の利用が可能
小規模企業共済のデメリットは、以下の通りです。
- 12ヶ月未満の掛捨てリスクがある
- 加入期間が20年未満は元本割れする
- 受取時には課税される
iDeCoとは国の制度で、公的年金の給付額に上乗せする目的で作られた私的年金制度です。
iDeCoは、加入者自身が申し込みして、掛金を拠出して、運用方法を自分で選ぶものです。
iDeCoのメリットは、以下の通りです。
- 掛金は全額所得控除
- 運用益が非課税
- 受取時の税制優遇
iDeCoのデメリットは、以下の通りでした。
- 運用リスクは加入者自身が負う
- 途中で資金の受け取りはできない
- 手数料がかかる
小規模企業共済とiDeCoについて見てきましたが、私自身は、小規模企業共済はやっていません。資金が途中で出せない上にリターンがあまりに少ないのでやるメリットは無いかなと思っています。
一方iDeCoは、運用を自分で選べリターンも多くでき、積立による分散投資と60歳まで引き出せないので自然に長期投資の実現が可能になります。
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